◆並木浩一著
◆日本キリスト教団出版局
◆ヨブ記はよく知られているが、決して読みやすい書物ではない。初めの一~二章と終わりの四二章七節以下の散文で書かれた部分は読みやすいが、その間にある三章から四二章六節までの長大な詩文は、難解である。ヨブと友人たちの会話は噛み合わず、神とヨブとの対話も理解しがたい。しかし著者は、ヨブ記は「その全体が文学作品としてのまとまりを持」つゆえに、「ヨブ記を理解するためにはこの作品の全体を読む必要がある」と強調する。その助けとなるのが、「ヨブ記を通読するための案内」を目的として書かれた本書である。ヨブ記の要点が掴みやすいようにまとめられているので、ヨブ記全体を読む最良の導き手となるだろう。また著者が、四二章六節の解釈が「ヨブ記全体の読み取りを決定」するとし、新しい読み方を提案していることはとても興味深い。
本書で用いられている著者の全訳が出版社のウェブサイトからダウンロードできる。またヨブ記をさらに深く読みたい方には、同著者の『ヨブ記注解』をお勧めする。
(2024年4月28日 副牧師 川嶋章弘)